瀬戸内ブルー Aji glass の世界[2]

香川の工房から美しいガラス作品を作り続けている、Aji glass のガラス作家、杉山利恵さんインタビューの2回目です。1回目を読んでいない方はこちらからどうぞ。

 

Aji glass 誕生の時

 

庵治石を送ってはもらったものの、当時まだ学生としてガラス制作の勉強中であった私はこの素材をどうしていいものやら、全くわかりませんでした。「どうやってガラスにすればいいの?」「いったいどのような色になるの?」「本当にガラスになるのかな?」わからないことだらけだったんです。

 

そこで、いろいろな人に教えを請うものの、実験の仕方が分からない日々。そんな中、唯一鉱物に詳しい先生が「どうなるか分からないけれど、一応方法はあるから試してみよう」と、初めての小さな実験をしました。すると、小さいけれど、確かに青みがかったガラスが生まれたのです!

「これはひょっとしたら綺麗な色が出るかもしれない」とおっしゃってくださって。その言葉を信じて一人黙々と試行錯誤を繰り返したのです。

 

そしてある日、1つのコップが誕生しました。

そのガラスは、今の庵治石硝子のように透き通ってはいないものの、それはそれは美しい優しいブルーだったんたんです。鳥肌が立ちました。体が震えました。ついにやったんだという思い、こんな美しい色が出るんだという感動。全てはその1つのコップから始まりました。これがAji glassの誕生です。

 

 

 

Aji glassとともに成長していく

 

➖Aji glassは脚光を浴びることとなりましたが、プレッシャーはありませんでしたか?➖

 

目の前にあるたったひとつのこのブルーのグラス、この美しさと感動を他の人たちと共有することができるのか、自分でもそのときはわかりませんでした。そこで、2012年に「香川県産品コンクール」に出品しました。結果として、多くの人に評価されて、審査員特別賞を受賞することができたんです。

 

このときを機に、たくさんのイベントの出展依頼や問い合わせが舞い込むようになりました。その期待に応えようと、研究所を卒業後地元へ戻り、約半年で工房を立ち上げました。

 

 

でも、当時の私はまだ学校を出たばかり。ご依頼は次々と頂いて大変ありがたいことなのですが、今ほど私自身の精度も高くなかったので、思うようなものができるのには10個作って1個できるかどうかというときもあったのです。とにかく、このガラスを生かしてあげられる、いいものを作れるようにならなければ!と、当初は人と会う時間も作れず、作品をひたすら作る毎日が続きました。

 

 

ときには本当に辛くて、「なんでAji glassと出会ってしまったんだろう?」「本当にこのガラスを作るのは私で良かったん?」と自問するときもありました。でもこの時があって、今の私とAji glassがあると思っています。